人気ブログランキング | 話題のタグを見る

はにかみ天使の思い出

はにかみ天使の思い出_e0273524_1383744.jpg


これはフランスのドイツ国境に近い、
アルザス地方を旅した時の事。



この辺りは過去に国境線が頻繁に入れ替わり、
言葉の響きはフランス語とドイツ語が混ざった感じだ。
事実ドイツ語もかなり通じると言う。
家の外観もドイツ風が多い。
有名なストラスブールは綴りを見れば完全にドイツ語。
ドイツ語読みすればシュトラスブルクだ。
シュバイツァー生誕の地もこの地方にある。
そのケゼルスベールは、
ドイツ語読みすればカイザースベルクになる。

この地方をスケッチした時は、
毎朝貸自転車を借りて、
ぶどう畑の道を町から町へ移動した。
そして偶然見つけたのがこのケゼルスベールだ。

古く落ち着いた小さな街で、
人々はとても親切だった。
城壁の見張り塔の尖塔の上に、
何やら巨大な鳥の巣がある。
あれは何かと尋ねると、
コウノトリの巣だそうだ。
地元の人達に大切に守られていると言う。

途中、ドイツ語読みで「カッツェンタール」と綴る町を通った。
フランス語読みで何と発音するのか分からないが、
「カッツ」は英語の「キャット」、
「タール」は谷を意味するから、
ここは「猫谷」と言う名の町になる。
猫が沢山いるのかと探してみたが、
残念ながら一匹も見あたらなかった。



旅も終わってパリに戻るため、
駅で切符を買おうとした時の事。
カウンターには若い女性がいて、
私を見るなり、

「まぁ、どうしましょう。私、英語が出来ないわ!」

と英語で呟いた。
目的地を告げ、
お金を払い、
切符を受け取って、

「ありがとう、さようなら」

とフランス語の単語を並べると、
心配そうに、

「私の英語、間違ってなかったですか?」

と聞いて来た。

「大変お上手でしたよ!」

と言うと、
とても恥ずかしそうに微笑んだ。
その姿が今でも心に残っている。














by farnorthernforest | 2012-08-10 01:46 | 旅の事

制作や旅や登山についてなど。


by 山下康一