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小さな街の小さな話

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ドイツ・ネッカー川沿いも古城で有名な所だ。
中でも一番有名な街はハイデルベルクだろう。
これはそこから電車で20分程の、
ネッカーシュタイナッハという小さな街での話。




車のほとんど通らない道の真ん中でスケッチをしていると、
近所の太ったおばさん達が5~6人集まって来た。
色々と話し掛けてくるのだが、
私はドイツ語がほとんどできない。

「私はドイツ語が余り話せません。英語で話して戴けますか?」

丸暗記のドイツ語をゆっくりと話すと、
(以下は言葉の感じや身振り手振りからの私の想像である)



「困ったねぇ。誰か英語出来ないかい?」

「出来る訳ないでしょ。
あっ、そうだ!
そこの息子なら高校生だから出来るよ、きっと」

道の左側にあった建物の二階の窓に声をかけると、
窓が開いて少年が身を乗り出した。

「なんだよ!」

「ちょっと下りて来て、この人の英語の通訳やってよ!」

少年はバタンと窓を閉めてしまった。

「オーイ、こら! 逃げるな!」

再び窓が開き、

「オレに出来る分けないだろ! 
あっ、そうだ! ○○なら出来るよ、きっと。オレ、呼んで来る」

玄関からものすごい勢いで飛び出して来て、
そのまま道を走って行ってしまった。
数分して友達を連れて向こうから現れ、
二人は私達の手前10m程の所で立ち止まり、
そして私を指差して、

「あの人の英語の通訳しろってさ」

するとそれを聞くや否や、
友達は猛ダッシュで走り去ってしまった。

「どいつもこいつも役に立たないねぇ」

彼の少年は何やら責任を感じたらしく、

「あそこの兄貴なら出来るかもしれない。オレ、呼んで来るよ!」

再び道を走り去り、
数分してまた兄貴と思しき人を連れて来た。
また手前10m程で立ち止まり、

「あの人の英語の通訳しろってさ。英語出来るよね?」

すると兄貴、
少年の頭をいきなり殴りつけ、

「バカ! フザケンな! オマエ、ブッ殺されんぞ!」

兄貴は大股でどたどたと歩き去ってしまった。
その時教会からお昼の鐘が鳴り響いた。

「・・・・・」

おばさん達はそれぞれ自宅へ戻って行った。



そして10分位しただろうか。
再びスケッチに集中していると、
おばさん達がそれぞれにお昼ご飯を持って来てくれたのである。

パン、サラダ、ハム、ソーセージ、チーズ、フルーツ、コーヒー、ジュース。
私は道の真ん中にシートを拡げて、
この豪華なランチを一人優雅に楽しんだ。
そして帰りには出来上がった絵を皆に見せ、
一人一人硬く握手をして別れた。














by farnorthernforest | 2012-08-10 09:58 | 旅の事について

現代風景画家 山下康一のブログ


by 山下康一