
北広島を後に、
いよいよ北上を開始する。
江別の六花亭にある喫茶室で一休みし、
岩見沢、三笠、富良野と走り、
美馬牛、美瑛に辿り着いたところで夕刻になった。
トイレ付きの展望広場で車中泊する事にする。

実は今年の4月にも北海道を訪れているのだが、
その時は久し振りに富良野市内を廻ってみた。
そして驚いたのは、
あの喫茶店『北時計』が閉店していた事だ。
ご存知の通り、
『北時計』はドラマ『北の国から』の舞台になり、
オーナーの今野照子さんは役者として何度も出演していた。
この方は元々東京で役者をされていたのである。
ご本人に伺った話では、
倉本聰氏が富良野に居を移した時に、
奥様と今野さんの3人で移り住み、
以来20年同じ家(棟割にしていたそうだ)に住んでいたのだとか。
そして『北の国から』の大ヒット。
ドラマのシリーズが終わった後でも、
喫茶店の外には順番を待つ観光客が並び、
街にはさだまさし氏の歌うあのテーマ曲が流れていた。
私は2階のギャラリーで、
2003年と2004年に個展をさせて戴いている。
時は移り変わる。
その倉本氏に一度だけお会いした事がある。
カウンターでコーヒーを飲んでいると、
私からは後ろにある入口のドアが開いて、
背後にものすごい力を感じたのである。
驚いて振り向くと、
そこに倉本夫妻が立っていた。
氏は椅子二つ空けて私の左側に座り、
カレーを注文し、
書類のようなものに目を通し始めた。
明日から富良野塾の公演が始まるのだと言う。
私はごく簡単にご挨拶申し上げた。
メディアで見る倉本氏はいつもとても鋭くて、
何か”恐い人”のようなイメージがあったが、
実際にお会いした印象では、
とてもやわらかい懐の広い方に感じられた。

段々と日が落ちて来る。




