人気ブログランキング | 話題のタグを見る

グランドキャニオンとオーロラの旅

グランドキャニオンとオーロラの旅_e0273524_9531324.jpg




もう何度も書いているので恐縮だが、
私の初めての海外旅行は33歳の時、
世界のアートの傑作を直接この目で見たくて、
4ヶ月かけてヨーロッパとアメリカの美術館を周った。

その旅の最後に私は、
日本では見られない大自然を見たいと思い、
アリゾナのグランドキャニオンを訪ね、
アラスカにオーロラを見に行った。





グランドキャニオンの素晴らしさはご存知の通り。
私はラスベガスからグレイハウンドのバスで行き、
途中のフラッグスタッフの公衆電話から英語に苦労して宿の予約をした。
グランドキャニオンではブライト・エンジェル・ロッジに2泊した。

一日はブライト・エンジェル・トレイルをプラトー・ポイントまで下りた。
確かグランドキャニオンの上部は亜寒帯気候だったと思うが、
谷の内部に入るとそこは砂漠気候。
トレイル沿いにはたくさんのサボテンが生えていた。
また所々に数百年前のインディアンの岩絵があり、
その中にココペリを見つけた時は感激した。

グランドキャニオンの素晴らしさは日の出・日の入りとよく言う。
その色の微妙さは言葉で説明のしようがない。
私は2泊したので2回日の入りを見たが、
2回とも3度夕焼けした。
日本では有り得ないので何の事かわからないと思うが、
夕焼けが3回起きるのだ。
おそらく空気が澄んでいるので、
遠く西の夕焼けが次々と反射して届くのだろう。
闇に沈む時の谷の空気感も忘れられない。


またグランドキャニオンではセスナにも乗った。
「我が社のパイロットはベテランばかり」
の謳い文句につられて飛行場のカウンターへ行くと、
現れたパイロットは何とおじいさん。
「オレは第二次世界大戦でゼロ戦を何機もやっつけた」
と自慢していたが、
「ベテラン」は英語では「退役軍人」の意味だと、
その時は気がつかなかった。

私の乗った小型セスナは本当に狭く、
横幅は軽の自動車ほども無かった。
私はパイロットの隣りに座り、
後ろに5人家族が乗った。
私の前には計器類と操縦桿があった。

滑走路を飛び発ち谷の上に来ると、
パイロットのおじいさんは操縦桿から両手を離し、
何とコーラを飲み始めた。
もちろんその間セスナは谷に向って真っ逆さまに落ちて行く。
今思えばあれは一つのアトラクションだったのだろう。
そう言えばセスナに乗ってすぐに、
「お土産袋だ」とビニール袋を渡されていた。

着陸時は強い横風で、
明らかにセスナが少し左向きになって滑走路に進入して行った。
「この風で大丈夫か?」と聞くと、
「いつもこんなもんだ」
着陸の衝撃は大きかったが、
無事着陸できてほっとした。





グランドキャニオンを見た後は、
またバスで一晩かけてラスベガスに戻った。
バスの運転手は右手にハンバーガー、左手にコーラを持ち、
食べながらひじで運転していた。
日本では考えられない。

そしてラスベガスまでの最後の休憩ポイント手前で、
「トイレに行きたい奴はいるか。いなければ次の休憩は飛ばすぞ。
おれは早くカジノに行きたいんだ」
と休憩を飛ばしてしまった。

ラスベガスに着くと、
そこからサンフランシスコ、シアトル、アンカレッジ、
そして北極圏にあるフェアバンクスまで飛行機を乗り継ぎ、
市街地から50kmほど森に入った牧場のロッジに7泊した。


着いてすぐに「オマエはラッキーだ」と言われた。
二日前まで気温がずっと氷点下50〜60度だったそうだ。
私が着いた時は氷点下35度。
今まで冬の北海道の旅で氷点下21度は経験した事があったが、
氷点下35度は初めてだ。
肌は痛みを感じるのだが、
それが寒さなのか熱さなのか区別がつかなかった。

7泊中6夜は晴れてオーロラがよく見えた。
空一杯に薄緑色のカーテンがゆらめき、
あるいは音のない花火のようなものもあったりと、
それはとても神秘的な光景だった。

ある夜は曇りだったのだが、
諦めきれずに10分程外に出て空を見上げていると、
突然頭上で雲が割れて、
その間からオーロラが揺らめくのが見えた。

滞在中に赤いオーロラも2回見た。
話によると、
一週間いて一度もオーロラが出ない事も珍しくないそうだ。
特に赤いオーロラは地元の人でも滅多に見ないと聞いた。
本当かどうかわからないが、
いずれにしても貴重な体験が出来た事に感謝している。

またロッジの主は写真家の故・星野道夫の知人で、
かつてよく彼と共に行動したそうだ。
ムースの肉を使ったハンバーグを食べながら、
思い出話を語ってくれた。





今思えばグランドキャニオンとオーロラの旅は、
地球を感じる旅、
宇宙を感じる旅だったのだろう。
早くまたそんな旅がしたいと思う。














by farnorthernforest | 2014-08-15 12:47 | 旅の事について

制作や旅や登山についてなど。


by 山下康一