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筏の喩え①




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難しい言葉を語らなくても大切な事は指し示せると、
最近深い感慨を持って景色を眺めています。
難しい言葉、つまり概念化がむしろ解らなくしていたのです。
それらは皆後の事です。

若い頃の私はダライ・ラマ14世の言葉は余りに当たり前過ぎて、
ほとんど興味がありませんでした。
同じように原始仏教経典も余りに当たり前の事しか書いていないので、
とても軽く感じていました。

しかしそれは違ったのです。
今は原始仏教経典やダライ・ラマの言葉の中に、
概念化した事で漏れてしまった最も大切な事を見つめています。
こういう勘違いをしないためにも正しい指導者が必要なのでしょう。

複雑でなかなか理解できない教義は例えて言えば、
どこを指しているのか判らない変形した矢印のようなものです。
一方ダライ・ラマや原始仏教経典は判りやすい単純な矢印です。
この事が解るまでに随分と遠回りをしました。







ここで原始仏教経典の中でも最も古いとされる『スッタ・ニパータ』の、
その中でも特に古いとされている文章を引用します。
この文章は古代ヴェーダなどの様式に近く、
今日の仏教用語を用いていません。
それだけにブッダその人の言葉に最も近いとされています。



『学生アジタの質問』

アジタさんがたずねた、
「世間は何によって覆われているのですか?
世間は何によって輝かないのですか?
世間を汚すものは何ですか?
世間の大きな恐怖は何ですか?
それを説いて下さい。」

師(ブッダ)が答えた、
「アジタよ。
世間は無明によって覆われている。
世間は貪りと怠惰のゆえに輝かない。
欲心が世間の汚れである。
苦悩が世間の大きな恐怖である、
とわたしは説く。」

アジタさんがいった、
「煩悩の流れはあらゆるところに向かって流れる。
その流れをせき止めるものは何ですか?
その流れを防ぎまもるものは何ですか?
その流れは何によって塞がれるのでしょうか?
それを説いて下さい。」

師は答えた、
「アジタよ。
世の中におけるあらゆる煩悩の流れをせき止めるものは、
気をつけることである。
(気をつけることが)煩悩の流れを防ぎまもるものである、
とわたしは説く。
その流れは智慧によって塞がれるであろう。」

アジタさんがいった、
「わが友よ。
智慧と気をつけることと名称と形態とは、
いかなる場合に消滅するのですか?
おたずねしますが、
このことをわたしに説いてください。」

「アジタよ。
そなたが質問したことを、わたしはそなたに語ろう。
識別作用が止滅することによって、
名称と形態とが残りなく滅びた場合に、
この名称と形態とが滅びる。」

「この世には真理を究め明らめた人々もあり、
学びつつある人々もあり、凡夫もおります。
おたずねしますが、
賢者は、どうかかれらのふるまいを語ってください。わが友よ。」

「修行者は諸々の欲望に耽ってはならない。
こころが混濁していてはならない。
一切の事物の真相に熟達し、
よく気をつけて遍歴せよ。」
(『ブッダのことば』中村元・訳、岩波文庫)



この文章の中には日本に伝わった仏教教義の元がいくつも含まれています。
例えばこの文を勉強し実践して大切なものを抽出し概念化したとします。
それはそれを行った人には大変有用なものになります。
しかしその概念だけを教えられた人には、
大変分かり難いものになるでしょう。

そしてそれだけなら大した問題にはなりませんが、
その理解できない教義を理解できないが故に深遠で価値あるものと思い、
心に強く執着した途端、
「これは正しく、あれは間違っている」という二分化が起き、
宗派や宗教間の対立が起き、
果ては殺し合いまで起こるのです。

まずほとんどの宗教が愛や慈悲を説きます。
しかしその一方でどうして教義を巡って争うのでしょうか。
そして殺し合いにまで発展するのでしょうか。
それともこれは宗教の宿命なのでしょうか。
あるいは宗教とはそういうものなのでしょうか。

答えは「否」です。
大切な事は言葉では語れません。
言葉は矢印でしかないのです。
しかし言葉(経典や教義)だけに頼った途端、
大切なものは抜け落ちてしまいます。
これが宿命です。

世の中には厳しい修行をされた方がたくさんいらっしゃいます。
それは大変立派で尊い行為だと思います。
しかしどんなに厳しい修行も執着すれば迷いになります。
だからブッダは中道を説いたのだと思います。

宗教はちょっとと言う方でも、
何かに学びたいとお考えの方は多いと思います。
では何を基準にそれを選んだら良いでしょうか。
一つの参考にブッダが説いた「筏の喩え(いかだのたとえ)」を挙げてみます。
これは現代においても驚愕の教えです。




ブログ『絵と旅』の2017年までの主要記事を一冊にまとめました。
詳しくは 山下康一公式ウェブサイト をご覧下さい。
















by farnorthernforest | 2019-01-27 23:19 | 日々の事について