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体は病気でも




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古くからの知り合いの先輩画家ががんで入院したと聞き、
大学病院にお見舞いに行きました。
昨年秋の企画展ではお元気そうだったので、
人伝に聞きとても驚きました。
この方は東京生まれで独学で絵を学び、
フランスに住んでヨーロッパ中を車で旅しながら絵を描き、
三十数年前に信州に移住されました。

とても優しい方ですがかつては毒舌で知られ、
人を褒めた事が無いと有名でした。
それが私がまだ三十前半だった頃に私を褒めていたと、
初対面の人にどんな奴だとしげしげと眺められた事もありました。
話に興が乗ると今では珍しいべらんめい調になり、
それがまた独特のおかしみと親しみを感じさせるのでした。



病室を訪ねると最初に、
「みんなに心配かけたくないから内緒にしてたんだよ」
「もう歳だから仕方ねんさね」
主治医の先生と治療方法の話し合いでは、
「好きな様にしてくれって言ったんだよ」
「それで○○製薬の試験中の治療法があるって言うから、
それで人体実験してくれって言ったんだ、
少しでも人の役に立つかも知れないからね」
「それがサァ、全然効かねえんだよ、ありぁダメだなぁ」
と、まるで他人事の様に、
かすれた声でニコニコと楽しそうに話すのでした。

見るからに大変な状況の中で、
体は病気でも心は健康な人以上に健康だと感じました。
夜、ご自宅の奥様に電話をすると、
「こっちだってただ生活するだけで大変なんだから」
「今夜はこれでビール飲んで寝るわよ」

ご夫婦の爽やかで透明な風に触れた気がしました。
お見舞いに行った筈ですが、
こちらが励まされている気がしました。
人間の生き方を改めて考えさせられました。



















by farnorthernforest | 2019-10-24 12:36 | 日々の事について

絵と旅と日常について


by 山下康一