スペインのサグラダファミリアの建築に45年携わり、
現在は制作監督をされている、
外尾悦郎さんのインタビューを『NHKアカデミア』で見ました。
色々と共感出来る言葉がありました。
私がサグラダファミリアを訪ねたのは1998年、
もう25年も前になります。
当時は入口付近のファサードの一部と、
有機的な彫刻で有名な四つの塔しかありませんでした。
番組で紹介されていたサグラダファミリアは、
私が見たものからしたらもう完成に近い様に思われ、
とても驚きました。
当時からここで一人だけ日本人が働いていると聞いていました。
それが外尾悦郎さんだったのです。
「芸術は科学と同じ」
外尾さんは芸術は科学と同じ、
真理を求める一つの道だと言います。
かつて中川一政はこう言いました。
「芸術家、学者、宗教家、真の見る事の出来る人間は、
一人で三者を具備し、そして高き調べをなしている」と。
芸術、学問、宗教、
どれも真理に至る道です。
それは高い山に別々の道から登る様なものです。
最初はこの三つの道はお互い交流が出来ないかも知れません。
しかし頂上に近づくに従い隣の道も見えてきて、
声を掛け合える様になるでしょう。
「最大の敵は自分」
「敵はたくさんいる。
しかし最大の敵は自分しかいない」
「いじめはしょっちゅうあった。
試練はいつでも突然来る。
しかしそれに即座に応えなければならない」
私にも経験がありますが、
以前は東洋人に対する西洋人の偏見はとても露骨でした。
しかし最大の敵はそれに負けてしまう自分だと、
ご自身を鼓舞して来たのでしょう。
能力は環境によって決まります。
価値も環境によって決まります。
環境が変わればそれらも変わります。
しかし環境に影響されない、
変わらないものを掴まなければなりません。
最後は自分との戦いになります。
「真のボスは希望を与える」
ガウディは職人に多くの給料は払えなかったそうです。
それは教会の建築費が全て寄付で賄われていて、
資金の集まらない時には建築は中断されていたそうです。
それなのに100年後の今も人を惹きつけて止まないのは、
希望という本当の給料を払っているからだと言います。
今でも建築費は寄付と観光収入で賄われています。
しかし職人達はガウディの理想に従い、
自信を持ってその仕事に邁進出来る。
真のボスは喜びと安心と希望を与える。
部下が自信を持って歩ける道を準備する人だと言います。
「完成はまやかし」
「完成より大切なものがある」
「この世に完成したものなどない」
「仕事の上でお金をもらうために、
一応完成と言う線引きをするが、
人間のする事に完成はない。
それは自然の中に完成がないのと同じ」
老子の大器晩成が大器免成の写し間違いだったと、
このブログに既に二度書きました。
大器免成は大器には完成と言う概念がないという意味です。
完成するとかしないとかは時間軸上の概念です。
しかしあるのは常に変化し続ける今だけであり、
今のどの一瞬も過不足なく円満です。
完成などどこにもありません。